「吸血鬼ゴケミドロ」は1968年8月14日に公開された松竹制作・配給の「宇宙怪獣ギララ」に続く怪奇特撮映画です。
上映時間は84分。
監督は前年に東映で「海底大戦争」を撮った佐藤肇。
脚本には「キャプテンウルトラ」の高久進が参加。
「仁義なき戦い」の金子信雄が出演しています。
1968年は実は映画の当たり年です。
あの「2001年宇宙の旅」や「猿の惑星」と言った作品が公開されています。
SF以外でも「ブリッド」「荒鷲の要塞」「ロミオとジュリエット」などもありました。
それでは、日本びいきで、カルト映画にも詳しいクエンティン・タランティーノが大ファンだという日本カルト映画「吸血鬼ゴケミドロ」のあらすじを紹介していきましょう。
映画「吸血鬼ゴケミドロ」あらすじ
舞台は1960年代後半の日本。羽田空港から伊丹空港に向かう小型旅客機が、外国大使を暗殺して逃亡中のテロリスト・寺岡によってハイジャックされる。その直後、旅客機は謎の火の玉と接触し、見知らぬ山中に不時着する。
不時着時の衝撃から奇跡的に生き残ったのは副操縦士の杉坂、フライトアテンダントの朝倉、次期総理大臣候補の政治家の真野、兵器製造会社の重役・徳安とその妻で真野の愛人の法子、精神科医の百武、宇宙生物学者の佐賀、ベトナム戦争で夫を失くした未亡人のニール、時限爆弾を持ち込んだ自殺志願者の松宮、そして寺岡という10人だけ。
他の生存者たちを銃で脅して逃走した寺岡は、岩陰でオレンジ色に輝くUFOを発見し、吸い込まれるように中に入っていく。すると、寺岡の額が縦にぱっくりと裂け、その中に人の血を吸うアメーバ状の宇宙生物・ゴケミドロが侵入する。ゴケミドロに寄生された寺岡は吸血鬼になり、生存者たちを襲う。
疑心暗鬼、パニックで乗客たちは逃げ惑う。吸血鬼の襲撃により、旅客機の生存者たちは次々と死亡してゆく。杉坂と朝倉はどうにか有料道路の料金所にたどり着くが、人々が血を吸われて死んでいるのを眼にする。ゴケミドロの地球総攻撃がすでに始まっていたことを知る二人。絶望の中、空は真っ赤に染まり、たくさんのUFOが飛来する。ゴケミドロによる人類滅亡のカウント・ダウンが始まったのだ…
日本映画「吸血鬼ゴケミドロ」はカルトへ
松竹のお盆興行作品として公開された「吸血鬼ゴケミドロ」は侵略と人類滅亡をテーマとしたSF映画です。
宇宙船はアダムスキー型のUFOをモデルにしてあります。
額の割れたメイクも不気味。
体内に侵入するエイリアンは1958年のアメリカ映画「マックイーンの絶対の危機」へのリスペクト?
恐怖を煽る音楽が素晴らしい。
さすがは後年、ドラえもんのオープニングも担当する菊池俊輔。
また、当時の多くのSF作品と違い、バッド・エンドのラストは印象的です。
タランティーノは「吸血鬼ゴケミドロ」に登場する”真っ赤な空”が印象的だったようで、自身の映画「キル・ビル」でもオマージュとして使用したとのこと。
宇宙から来た吸血鬼というと、近年では1985年に制作されたアメリカ映画「スペース・バンパイア」が思い出されますが、「吸血鬼ゴケミドロ」は17年も前も作品です。
侵略者が吸血鬼というアイディアが秀逸ですよね。
日本カルト映画の佳作
実は「スペース・バンパイア」の中でも、催眠術を使って、バンパイアの居所を割り出すシーンがありますが「吸血鬼ゴケミドロ」の中でも、気を失った朝倉が百武に催眠術をかけられるシーンがありますが、インスパイアされたのかもしれません。
日本の古いカルト映画がハリウッドにマネされたとしたら、楽しいと思いませんか?
カルト映画「吸血鬼ゴケミドロ」が公開された1968年とは?
1968年はベトナム戦争真っ只中で、南ベトナムのソンミで米軍による大虐殺が起こり、日本ではマラソンランナーの円谷幸吉選手が自殺、佐世保では米原子力空母エンタープライズ寄港反対の抗議集会が開かれ、東大、日大の学園闘争の火種となる事件もあり、翌69年の安保闘争に繋がっていきます。
先が見えない不安がこの作品にも表れているのかもしれません。
ちなみにこの年の12月は府中で三億円強奪事件が起きた年でもありました。
カルト映画は世相を写すとは思いませんか?
(ナイトメア・シンジ)
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