今日、ご紹介するのは、1984年4月14日公開の邦画「人魚伝説」です。

「人魚伝説」は映画会社やスポンサーの意向に操作されることなく、監督が自由に思い通りに映画を撮った最初の商業映画と言っても過言ではないかもしれません。

大手映画界が仕切る日本映画界を震撼させた「人魚伝説」とは?

邦画「人魚伝説」は宮谷一彦原作の同名劇画の映画化です。
ジャンルはタイトルと結びつかないバイオレンス・アクション。

上映時間は110分。

監督は池田敏春。
邦画『人魚伝説」はディレクターズ・カンパニー第1弾作品でATG提携作品です。
(ディレクターズ・カンパニーは”大手の映画制作では自分たちの作りたい映画が出来ない”と考えた当時の新進気鋭の映画監督9人で1982年6月に設立されました。メンバーは、おしっこチビりそうな凄い監督ばかりです。代表は長谷川和彦。他に石井聰亙、井筒和幸、もちろん、池田敏春、大森一樹、黒沢清、相米慎二、高橋伴明、根岸吉太郎。残念ながら、1992年5月倒産。もし、潰れてなければ、どれほどのたくさんの名作が誕生しただろう?)

監督の池田敏春について

池田敏春は山形県出身。
早稲田大学第一文学部卒業。
(いわゆるブンイチ。かっこいい)

在学中から石原プロモーションで助監督を務め、卒業後に日活に入社。
1980年映画「スケバンマフィア・肉刑・リンチ」にて監督デビュー。
1982年映画「天使のはらわた 赤い淫画」で日活と衝突。
日活を退社しディレクターズ・カンパニーに参加する。
映画「人魚伝説」はディレクターズカンパニーの第一作目の作品です。
監督の池田敏春は2010年12月24日に三重県志摩市の知人宅を出た後、消息不明になり、26日に同市大王埼灯台付近の海上で遺体として発見されました。
警察の見解は自殺でした。
ご冥福をお祈りするとともに新作が見れなくなって残念に思います。
この海岸は「人魚伝説」が撮影されたロケ地でもありました。

映画「人魚伝説」キャスト

主演の佐伯みぎわ役は白都真理。
桐朋学園芸術短期大学演劇科在学中に、ミス・ユニバース関東代表に選出。
1979年、NHK大河ドラマ「草燃える」にて女優デビュー。
身長165センチ。
映画「人魚伝説」は白都真理の代表作です。

出演は白都真理の夫佐伯啓介役にATGの申し子江藤潤。
(祭りの準備(1975年)や青春の殺人者(1976年) など。ちなみにATGとは、日本アート・シアター・ギルドのこと。1961年から1980年代にかけて活動した映画会社で、他の大手映画会社とは一線を画す非商業主義的な芸術作品を製作・配給した)

宮本祥平役に清水健太郎。
(この頃は”ホントは悪い人”やらしたら絶品だったな。そのうち、”見てくれも悪い人”に変わっていくけど)

祥平の父親で町の実力者に青木義朗。
(TV「特別機動捜査隊」に出てました。ほとんど知らないだろうけど、テレビ黄金時代の人気ドラマのひとつ)

映画「人魚伝説」は第6回ヨコハマ映画祭で監督賞を、主演の白都真理が主演女優賞を受賞しています。
(ヨコハマ映画祭は1980年2月3日に第1回開催を行い2019年現在41回を数える。スポンサーをつけず、毎年2月上旬の日曜日に1日だけ開催されている。受賞者の出席率が高くて有名。筆者も学生時代、何度も足を運びました。受賞者には花束とトロフィーと賞状だけ。賞金はない。受賞者に会場のお客さんからプレゼントを渡せる数少ない映画祭)

では、邦画「人魚伝説」のあらすじをご紹介していきます。

邦画「人魚伝説」

佐伯啓介と妻のみぎわは、アワビ漁で暮らす夫婦。
啓介は、漁の最中、一人の釣人が殺されるのを偶然に目撃する。
啓介とみぎわは死体を捜そうと船を出す。
海女のみぎわが海に潜ると生命綱を引くはずの夫が胸板を鈷で射抜かれて落ちてくる姿を見てしまう。
みぎわもまた、水中銃で腕をやられ失神。
岩場に打ち上げられてどうにか命を取り止めたみぎわは、自分が”夫殺しの犯人”にされていることを知る。
動揺した彼女みぎわは、啓介の子供の頃からの友人宮本祥平に助けを求める。
祥平はみぎわを近くの小島、渡鹿野島に隠す。
数日後、祥平の父親輝正らの一行が渡鹿野島へやって来る。
町の権力者である輝正は海岸一帯が原子力発電所建設の候補地として上っていることを知り、誘致をすすめていた。
輝正の宴会に出たみぎわは、原発に反対した官本の部下、下川の殺人現場を目撃されたため啓介が殺されたこと、みぎわに逃げられたので他の女に濡れ衣を着せたことを知る。
みぎわは、祥平の指示で自分を殺そうとした男を逆に刺し殺し、海に飛び込み逃走する。すべてを知ったみぎわは、官本宅に忍び込んで輝正をプールで溺死させる。
父を殺された祥平は激怒。
みぎわは捕らえれて海中に網を被せられて投げ込まれる。
網から決死の脱出を試みるみぎわは海中で啓介の死体を発見する。
祥平ら原発推進派への復讐を決意するみぎわ。
みぎわはモリを改造して展望塔での原発竣工パーティに乗り込み、祥平をはじめ、参加者を次々に血祭りに上げてゆく。
みぎわを包囲する機動隊。そこへ、突然、すさまじい嵐が巻き起こる。
嵐は機動隊をもなぎ倒してゆく。
そして、みきわは海の中に消える…。

バイオレンス映画「人魚伝説」

後半は怒涛のごとく、血が舞います。
公開当時、主演の白都真理があまりに血糊が凄すぎて、精神的に病んだと一部の報道で読んだ記憶があります。
(今、探してもそんな記事はないけど)

復讐バイオレンスとしては、とても良く出来ています。
原発を扱っていますが、今見ても新鮮。

水中シーンは圧巻の美しさで超おすすめ。
(水中写真家の中村征夫の撮影による)

また、白都真理が可憐なんだわ。
(前半だけだけど。後半は悪鬼)

”原発推進派による殺人と謀略”と聞くと、28歳で命を落としたアメリカ合衆国の労働組合活動家カレン・シルクウッドを思い出しませんか?

1974年オクラホマ州クレッセントのシマロン核燃料製造所に勤める化学技術者だったカレンは、プラント内で行われていた多数の不正行為に気づき、その事実をアメリカ原子力委員会(AEC)に証言。
その後、カレン自身が、プルトニウムによる不審で深刻な汚染を受けていることが判明。彼女はこれらの事実を告発するため、証拠書類を持ってニューヨーク・タイムズ紙の記者に会いに行く途中で、自動車事故により死亡した。
(今だに他殺の可能性が論議されている)

カレンの事件は、いわゆる「シルクウッド事件」として、一大原子力スキャンダルに発展しました。
(1983年映画化「シルクウッド」メリル・ストリープ。マイク・ニコルズ監督)

映画「人魚伝説」様々な意味でおすすめのバイオレンス邦画です。

(ナイトメア・シンジ)

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