今日、ご紹介するのはクライム・サスペンス「復讐するは我にあり」です。

人間が怖い映画「復讐するは我にあり」は日本映画。
1979年4月21日公開。
配給は松竹。
上映時間は140分。

映画「復讐するは我にあり」

実際に起こった「西口彰連続殺人事件」を題材に佐木隆三の同名長編小説を今村昌平監督が映画化した作品です。

「西口彰連続殺人事件」とは?

前科4犯の西口 彰(当時37歳)が1963年(昭和38年)10月に福岡県で2人を殺害、指名手配され、九州を渡り、千葉や静岡、東京に現れ、1964年(昭和39年)1月3日に逮捕されるまで、大学教授や弁護士などを騙ってさらに3人を殺した事件。

映画「復讐するは我にあり」のタイトルは、新約聖書(ローマ人への手紙・第12章第19節)”愛する者よ、自ら復讐すな、ただ神の怒に任せまつれ。録して「主いひ給ふ、復讐するは我にあり、我これに報いん」とあり”という言葉の一部。
「悪人に報復を与えるのは神である」という意味です。
作者である佐木隆三が”主人公を肯定も否定もしない”という気持ちを込めて引用。

映画「復讐するは我にあり」の監督は今村昌平。
(1983年映画「楢山節考」、1997年映画「うなぎ」でカンヌ国際映画祭パルムドールを受賞。映画「うなぎ」は役所広司の演技に唸ります。1961年映画「豚と軍艦」から2001年映画「赤い橋の下のぬるい水」までたくさんの名作を生み出した監督)
映画「復讐するは我にあり」も第3回日本アカデミー賞で最優秀作品賞 ・最優秀監督賞 ・最優秀脚本賞 ・最優秀助演女優賞・最優秀撮影賞を受賞しています。

出演者は榎津巌に緒方拳。
(前年1978年映画「鬼畜」で日本アカデミー賞最優秀男優賞を獲得。以降、1988年までオスカー受賞の常連者になる。映画「復讐するは我にあり」は緒方拳がもっとも油が乗りきった時期の作品と言ってもいい)

巌の父親役に三國錬太郎。
(佐藤浩市のお父さんです)

妻の加津子を倍賞美津子。
(アントニオ猪木の元お嫁さんです)

巌に心を寄せる女将ハルに小川真由美。
(この映画「復讐するのは我にあり」と「配達されない3通の手紙」で最優秀女優賞受賞。)

他にフランキー堺や北村和夫、根岸とし江など。

では、人間が怖い映画「復讐するのは我にあり」のあらすじを最後までご紹介します。

映画「復讐するのは我にあり」あらすじ

昭和39年1月4日、厳重に警戒された警察車輛の中に手錠をかけられた榎津巌(えのきづ いわお)の姿があった。
ふてぶてしく、悪びれることなく捜査員に話しかける巌。
世間を震撼させた”榎津巌の78日間の逃亡生活”とは…。

昭和38年10月18日、専売公社勤務で煙草の集金に回っていた柴田種次郎と馬場大八の惨殺死体が豊本線築橋駅周辺で発見され、現金約四十一万円が強奪される。
捜査線上に以前、タバコ配給の運転手をしていた榎津厳が容疑者として浮かぶ。
数日後、警察は宇高連絡船甲板に巌の遺書と、一足のクツを発見。だが、警察は巌が船からの投身自殺を装ったと仮定し、巌の後を追う。
巌の両親、鎮雄とかよは別府市鉄論で旅館を営んでいた。
一家は熱心なカトリック信者だった。
戦時中、巌は幼少期に網元をしていた父が、軍に理不尽に船を供出させられた現場を目撃、信仰を失う。
自暴自棄になった巌は少年刑務所、刑務所への服役を繰り返すようになる。
偶然に知り合った加津子と結婚するが、加津子は巌に愛想をつかし離婚。
敬愛する巌の父鎮雄の説得で別府に戻る。
巌は鎮雄を嫌い、鎮雄と加津子との仲に疑心暗鬼を募らせて家を離れるようになる。
バー「麻里」のママ千代子に執拗に関係を迫り、ヌードダンサー上りの「金比羅食堂」を経営する吉里幸子と同棲したりと女性関係に溺れてゆく巌。
巌は凶悪犯として、全国指名手配される。
巌は警察の追及から逃れるため、浜松に飛ぶ。
浜松の場末宿「あさの」では大学教授と称して宿泊し、宿の女主人ハルと恋仲になる。
次に巌は千葉の裁判所に現れ、老婆から息子の保釈金をだまし取る。その帰りのタクシーで相乗りして知り合った河島老弁護士の東京の家まで行くと、河島をも殺して金品を奪う。
再び、浜松に舞い戻った巌の素姓にハルとその母、ひさ乃も気づき始める。そんな母娘を榎津は絞殺、「あさの」の家財を売り飛ばし、電話を質入して逃亡資金を貯えるが、巌が以前に相手をした売春婦に目撃されて警察に通報される。
巌の七十八日の逃亡生活は終わり、巌は死刑に処される。
それから、数日。
別府湾を望む丘の上で、骨壷から巌の骨片を空に向って投げる鎮雄と加津子の姿があった…。

「復讐するは我にあり」の見どころ

当時の日本を代表する女優の”脱ぎっぷり”がいい。
(平成、令和とは違います)

豪華キャストの抑えた演技。
(今村昌平がドキュメントを意識しているからかも)

緒方拳の演技も圧巻です。
後半、「あさの」の女将ハルが北村和夫扮する旦那に折檻されるシーン。
台所でそれを聞いていた巌が包丁に手を伸ばすと、ハルの母、清川虹子に無言で手を掴まれ、思い留まる。
暗がりの中のなんとも言えない巌の表情が映し出されます。
(この場面は凄い!必見!)

人間が怖い映画「復讐するのは我にあり」

敬虔なカトリック教徒だったはずの榎津巌が何の恨みもない人間を次々に殺していくことに正直、驚きと恐怖を禁じえません。
(実際に起きた事件ということに衝撃)

ラスト近く。拘置所を訪れた鎮雄に巌は言います。
「オレは罪のない人間たちを殺した。だから、殺される」
そして、巌は鎮雄に言います。
「あんたを殺せば良かった」
鎮雄は
「親殺しが出来るわけがない。お前は恨みもない人間しか殺せない性分だからな」と巌の顔に唾を吐きかけるのです。

キリスト教神の十戎には
・父母を敬いなさい。殺してはならない。
・姦通してはならない。
・盗みをしてはならない。
とあります。

「復讐するは我にあり」は”人は他人のすべてを理解できるわけはない”という残念な事実を見る者に強烈に訴えかけます。

人間が怖い映画「復讐するは我にあり」
見ごたえ充分。
是非、御覧下さい。

”今宵も悪夢は世界のどこかで誰かが見る”

(ナイトメア・シンジ)

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