今日、ご紹介するのは、あまりにも有名な日本映画「羅生門」です。

映画「羅生門」は”人間の怖さと愚かさ”を描いた名作映画。

監督はご存知、日本が世界に誇る黒澤明。
(説明するまでもないでしょうが)

多襄丸役に三船敏郎。
武士の金沢役は森雅之。
金沢の妻真砂役は京マチ子が演じています。
(京マチ子は2019年5月12日に逝去。ご冥福をお祈りします)

映画「羅生門」は1950年8月26日に公開されました。
公開当時はあまり評判も芳しくなかった映画「羅生門」は、日本映画として初めてヴェネツィア国際映画祭金獅子賞とアカデミー賞名誉賞に輝き、黒澤明が世界で認知され、評価されるきっかけになった作品です。

原作は芥川龍之介の短編小説「藪の中」。
脚色は橋本忍。

上映時間は88分。
モノクロ映画です。

人間がこわい映画「羅生門」のあらすじを最初から最後までご紹介します。

映画「羅生門」あらすじ

時は平安時代。
かつては、都の正門であった羅城門も今は朽ち果ている。
羅城門で豪雨を避けて、雨宿りをしている杣売り(焚き木の販売業者)と旅法師。そこへ、もう一人の男(下人)がやって来る。
杣売りは”ある奇妙な事件”について、下人に語り始める。
杣売りと旅法師は事件の参考人として出頭した帰りの途中だったのだ…。

3日前、薪を取りに山に入った杣売りは、武士・金沢武弘の死体を発見して検非違使に届け出る。
取り調べで、杣売りは、遺体のそばに市女笠、踏みにじられた侍烏帽子、切られた縄、そして赤地織の守袋が落ちており、そこにあるはずの金沢の太刀、女性用の短刀は見当たらなかったと証言する。
道中、金沢と会った旅法師も、金沢は妻の真砂と一緒にいたと証言。

金沢を殺した下手人として盗賊の多襄丸が連行されてくる。
多襄丸は、山でうたた寝をしている時、金沢ら侍夫婦を見かけて真砂を見て欲情してしまう。
多襄丸は金沢を騙して縄で縛り上げ、真砂を手篭めにしたことを話す。その後、真砂が両者の決闘を要求し、勝った方の妻になると申し出たことから、多襄丸は金沢と正々堂々と戦い、激闘の末に金沢を倒したという。ところが、その間に真砂は逃げており、多襄丸は刀も短刀の行方も知らないと証言する。

次に真砂が証言をする。
真砂が手篭めにされた後、多襄丸は金沢を殺さずに逃げたという。
真砂は金沢を助けようとしたが、眼の前で男に身体を許した真砂を金沢は軽蔑の眼差しで見据えた。
真砂はその目に耐えられなくなり、短刀で自らを殺すように懇願する。
真澄は気絶。
目が覚めると、夫に短刀が刺さって死んでおり、自分も後を追って死のうとしたが死ねなかったと慟哭する。

最後に巫女が呼ばれ、金沢の霊を呼び出す。
霊曰く、真砂は多襄丸に辱められた後、驚くべきことに多襄丸に一緒に行く代わりに自分の夫を殺すように求めたという。しかし、その浅ましい態度に多襄丸もあきれ果て、女を生かすか殺すか夫のお前が決めて良いと金沢に申し出る。それを聞いた真砂は逃亡、多襄丸も姿を消した。
一人残された金沢は無念のあまり、妻の短刀で自害したと言う。そして、自分が死んだ後に何者かが現れて、短刀を引き抜いたが、誰かわからないと答える。

食い違う三者三様の証言。
杣売りは、「三人とも嘘をついている」と宣言する。実は、杣売りは事件の一部始終を目撃していたが、巻き込まれるのを恐れて黙っていたという。
杣売りによれば、多襄丸は真砂を手篭めにした後、真砂に惚れてしまい、夫婦となることを懇願したが、彼女は断り、金沢の縄を解いた。ところが、金沢は辱めを受けた彼女に対し、武士の妻として自害するように迫った。それを聞いた真砂は笑い出し、男たちの自分勝手な言い分を罵り、金沢と多襄丸を殺し合わせるように仕向け、結果、金沢と多襄丸は無様な様子で必死に斬り合い、ようやく多襄丸が金沢を殺したという。
真砂は動揺し、逃げ出した。
人を殺めて、動転している多襄丸は真砂を追うことができなかったと杣売りは下男と旅法師に告げる。
3人の告白は、それぞれの見栄のための虚偽だったのだ。
情けない事件の顛末を知った旅法師は”人間の浅はかさと自分勝手な所業”を悲しむ。その時、羅城門の一角で赤ん坊の泣き声が聞こえる。
何者かが赤子を捨てていったらしい。
下人は赤ん坊をくるんでいた着物を奪い取る。あまりに非情な振る舞いに杣売りは下人を咎めるが、下男は現場から無くなっていた金沢の太刀と短刀を盗んだのが杣売りだったと指摘し、「お前に非難する資格はない」と罵り、去って行く。
呆然と赤子を抱く旅法師。
杣売りが赤子に手を伸ばしたのを見て、「赤ん坊の着物まで手を出すのか!」とその手を払い除ける旅法師だったが、杣売りは「5人の子供と同じように自分の子として育てる」と言い、赤子を大事そうに抱えて去っていく。
旅法師は己を恥じながらも、人間の良心にわずかな希望を見出す…。

人間が怖い映画「羅生門」

証言者によってくい違い、結局どれが真実なのかわからない。
しかし、筆者が一番怖いと感じたのは、実はラスト。
(これは映画「羅生門」の評価と異なる見解であることを最初に明記しておきます)

多くの映画評論は”最後に一筋の光明を見出した”と述べていらっしゃいます。
ですが、筆者は旅法師から子供を受け取り、にこやかに立ち去る杣売りを見て、”人間の
怖さ”を再認識しました。
”ウソの証言をして、刀と短剣を盗んだであろう杣売りがこの後、この子供を本当に育てるのだろうか?”
(そう考えたら怖いと思いませんか?疑心暗鬼のかたまりですいません)

日本映画「羅生門」のすごさ

この映画では、真砂が手篭めにされるシーンや金沢が殺されるシーンは直接的に描かれていないのが特徴。
(見る者に委ねている)

金沢と多襄丸の格闘シーンは、長めのカット割で見事に見せています。
(入念なリハーサルがなされたことは想像に難くない)

金沢の背中越しの”京マチ子の画”なんて、もう完璧。
(撮影は宮川一夫。溝口健二や黒澤明らの作品のカメラマンとして有名)

刀が風を切る効果音がないのも新鮮。
(びゅーんってやつ)

京マチ子の名を世界に轟かせたのも、この映画「羅生門」でした。
女優として、”生涯独身”を貫き通した京マチ子。
長きにわたり、日本映画界を底上げしてくれた女優として長く後年に語り継がれることは間違いありません。
素晴らしい女優でした。
(あえて、批判を承知で申し上げますが、女優川栄李奈の24歳での結婚、出産は驚いた。24歳という最も油が乗り、これから大きな映画賞も取るだろう逸材が女優業から一時的に退くのは惜しまれる。もちろん、幸せになって欲しいし、祝福はしますけど)

いや、しかし、この映画「羅生門」は三船敏郎の躍動感がハンパない。
(天才)

笑顔のショットなんて凄すぎる。
(すべての俳優は参考にすべき)

映画「羅生門」は今から半世紀以上も前の映画です。
その技術とセンスは舌を巻く。

次回は洋画「トゥルーロマンス」をご紹介します。
お楽しみに。

”今宵も悪夢は世界のどこかで誰かが見る”

(ナイトメア・シンジ)

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