日本映画「恐怖奇形人間」について
「恐怖奇形人間」は1969年10月19日に公開された日本映画です。
怪奇で奇抜グロテスクなミステリー映画に仕上がっています。
原作は江戸川乱歩。
上映時間は99分。
監督は「網走番外地」の石井輝男。
出演者には舞踏家の土方巽や後に「刑事コロンボ」の吹き替えでお馴染みの小池朝雄や近藤正臣がいます。
「恐怖奇形人間」がどうして、カルト映画と呼ばれるようになったか?
まずは、あらすじから紹介しましょう。
日本映画「恐怖奇形人間」あらすじ
過去の記憶がない人見広介。どうやら医学生だった広介は精神病院に閉じ込められているのだが、その理由も分からない。サーカスの少女、初代が歌う子守唄から記憶を取り戻しかけたが、目の前で初代が殺されその犯人にされてしまう。逃亡者になった彼は北陸へ向かう列車の中で自身と瓜二つの菰田源三郎の死亡記事を偶然、目にする。広介は埋葬された源三郎が生き返ったように見せかけて源三郎に成りすまし、生活を送るようになる。源三郎の父、丈五郎は生まれながらの奇形で、執事の蛭川に家を任せ、沖の無人島で島を改造しているという。しばらくして、菰田家で源三郎の妻の千代子が殺される。広介は執事の蛭川、遠縁にあたる娘の静子と下男を連れ、無人島に渡る。
丈五郎は無人島に奇形人間を作り、自らの理想とするユートピアを作ろうとしていた。そこでは初代そっくりの秀子という娘が男と人工的なシャム双生児にされていた。広介は源三郎の弟であり、広介が医大に通っていたのは丈五郎が奇形人間の製造を任せるためだったのだ。広介は自らが源三郎ではなく広介だと丈五郎に打ち明け、愛しあうようになった秀子に外科手術を施し、元の体に戻すが、秀子には出生の秘密があった。
秀子は丈五郎が浮気を憎んだ妻、ときをせむし男に犯させて生ませた子だった。広介と秀子は兄妹だったのだ。丈五郎はピストルを出し、広介に奇形人間製造の協力を求めるが、拒否。そこで、下男が話しを始める。下男の正体は実は明智小五郎であり、ピストルの弾はすでに抜かれていた。明智は執事の蛭川が静子と愛人関係にある上、丈五郎を裏切り、広介を精神病院へ送り、源三郎を殺そうとして誤って千代子を殺してしまったのだと隠された事実を暴く。蛭川と静子は海に転落、もはや、計画は不可能と悟った丈五郎は自殺してしまう。愛し合うようになった秀子と広介は心中し、二人は花火となって儚く空に散ったのだった…。
日本映画「恐怖奇形人間」がカルト映画になった理由
まず、「恐怖奇形人間」の脚本は大胆にも、江戸川乱歩全集の諸々の作品からコンセプトを取り出したミックスでした。
そのおどろおどろしさは今、見ても新鮮で、感受性の強い人なら目を背けるグロテスクさです。
ですから、公開当時は、セックスや流血のシーンは少なかったにもかかわらず、成人指定となり、興行成績が振るわず、わずか10日で打ち切りになりました。
「恐怖奇形人間」はしばらく、幻の作品として闇に埋もれてましたが、1970年代頃から名画座にかかるようになり、タイトルの「恐怖」「奇形」というフレーズが人々の興味をあぶったのか、その面白さが口コミで広がりました。
1980年代に奇形を描いた「フリークス」という古い映画が再評価されて、日本にもカルト映画という新たなジャンルが確立されたことも理由として挙げられます。
「恐怖奇形人間」はやがて、日本のみならず、欧米でも高い評価を受けます。
明智小五郎作品としても、筆者はユニークな出来だと思います。
主役が明智小五郎でないところも、乱歩ファンの心をくすぐりますよね。
こうして、「恐怖奇形人間」は、日本カルト映画として、再評価されることになったのです。
余談ですが、「恐怖奇形人間」は公開当時はR-18指定でしたが、現在はR-12指定になっています。
時代が変われば、人の目も変わるんですね。
(ナイトメア・シンジ)
コメント