映画「ツィゴイネルワイゼン」は1980年4月1日に公開された日本映画です。
上映時間は145分。
監督は鬼才、鈴木清順。
内田百聞の短編「サラサーテの盤」を原作とした怪異譚的な映画です。
「ツィゴイネルワイゼン」はブルーリボン賞、日本アカデミー賞など数々の賞を受賞した作品。
出演は原田芳雄、大谷直子、大楠道代、麿赤字児、樹木希林、佐々木すみ江など芸達者な俳優揃いで映画「8月の濡れた砂」など多くの作品がある映画監督の藤田敏八も出演しています。ちなみに藤田は「ツィゴイネルワイゼン」で日本アカデミー賞優秀助演男優賞を受賞しています。
まずは日本カルト映画史に残るであろう「ツィゴイネルワイゼン」のあらすじを見ていただきたいと思います。
カルト日本映画「ツィゴイネルワイゼン」あらすじ
元学者の中砂糺は、親友の士官学校ドイツ語教授の青地豊二郎との旅の途中、芸者小稲と出会う。小稲は弟を自殺で亡くしたばかりであった。中砂は宿泊していた宿の外にいた盲目の旅芸人(老人と若い男女)3人に興味が沸き、青地と別れ旅を続ける。月日は経ち、中砂は名家の娘である園と結婚。青地は彼女が小稲と瓜二つであることに驚きを隠せない。座敷で鍋を振る舞われる青地は、園の自分が誰に似ているのかという問いかけに言葉を濁すが、中砂はあっさりと小稲という芸者だと答え、園は青ざめてひたすら手元の蒟蒻をちぎり続ける。食後に青地は中砂のサラサーテの「ツィゴイネルワイゼン」のレコードを聴かされ、その中のサラサーテ自身のものとされる声の聴き取りを頼まれるが、何を言っているのか青地にも聴き取れない。
中砂はその後も妻を置いて、気ままに旅をし、旅先で小稲との関係を続ける。その後、中砂夫妻の間には娘の豊子が生まれるが、園は中砂が持ち込んだ悪性のスペイン風邪に倒れ、まだ赤ん坊の娘を残して亡くなる。ある日青地が中砂を訪ねると、豊子の乳母として現れたのは中砂と結婚した小稲であった。やがて、青地は妻・周子の妹で末期の病で入院中の妙子から、周子が中砂と見舞いに訪れた際、中砂の目に入ったゴミを周子が舌で舐め取っていたと聞き、二人の関係を疑う。周子が中砂に強引に迫られ愛撫されるシーンが描かれ、その後花や果物の香りでアレルギーを起こすはずの周子が、体質が変わったといって腐りかけた水蜜桃を味わうようになる。しかし桜吹雪の季節、中砂は旅先で麻酔薬のようなものを吸ったことが原因で死んでしまう。
5年後、小稲は幼児に成長した豊子を連れて青地家をたびたび訪れ、中砂が青地に貸したままの難解なドイツ語の蔵書の返却を求める。ついには「ツィゴイネルワイゼン」のレコードを求められるのだが見つからない。実はそのレコードは周子が隠して持っていたことが分かるが、周子は中砂との関係は否定する。青地がレコードを持ち中砂家を訪ねると、小稲は生前の中砂の不実に悩んでいたことを語り、彼の残したものを全て手元に置きたいという。そして彼の血を引く豊子を心からかわいがっているといい、今まで取り戻した蔵書は中砂の霊が娘と会話して青地が所有していると語ったのだという。やがて、小稲は豊子の姿が見えないことに気付き取り乱す。青地は帰り道、豊子に会う。豊子は青地に中砂が生前約束していたように骨をくれといい、「生きている者は本当は死んでいて、死んでいる者が生きているのよ、お父さんが待っているわ」と言われる。青地は怖くなり、逃げる。が、その先の海辺では豊子が白菊を飾った小舟とともに待っていた…。
映画「ツィゴイネルワイゼン」がどうしてカルト映画なのか?
一言で言えば、難解。
そして、エロテッックなんです。
観客は鈴木清順の次々に映し出される耽美で退廃的な、それでいて美しい映像の羅列の迷路に迷い込み、方向を失ってしまいます。
”あの世とこの世の境目”を行き来している間に、観客はどちらが現実なのかさえ、判らなくなるのです。
大楠道代のゾッとすような妖艶さは一見の価値あり。
「腐りかけがいいのよ、なんでも腐ってゆくときが」なんて台詞も凄みがあります。
外国映画にない日本映画独特のシュールな雰囲気が楽しめます。
カルト映画「ツィゴイネルワイゼン」は見るべき映画
但し、時間の余裕がある時にどうぞ。
記憶に残る映画になるはずです。
寝不足の時はオススメしません。
なぜかって、2009年の「沈まぬ太陽」までは、日本アカデミー賞最優秀作品としては、一番長い作品でしたから。
あれは難しくないしカルト映画ではないし。
(ナイトメア・シンジ)
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