仁義の墓場」とは?

1975年2月15日に公開された作品で制作・配給は東映。

監督は「仁義なき戦い」シリーズの深作欣二。

主演は東映初主演となる渡哲也。

「仁義の墓場」は実在のヤクザ石川力夫の破天荒な生涯を描いた東映曰く、”スーパー・バイオレンス”作品で上映時間は94分。

ここまではカルト映画の匂いはありません。

映画「仁義の墓場」のどこがカルトなのか?

自分の組織に牙を剥き、掟に逆らい、杯を交わした人間に平気で襲い掛かる型破りで破天荒で破滅的ヤクザが主人公だからです。

まったく感情移入が出来ず、これでもかという凄惨な暴力描写のつるべ打ちです。

2013年に旭日小綬章を授章、お酒のCMで静かな笑顔の佇まいとは真逆のキャラクターを「仁義なき墓場」では渡哲也が演じていることもあるかもしれません。

一般映画として公開されるも、興行成績は振るわなかったも頷けます。

あらすじを見てみましょう。

唖然、呆然しますよ。

https://youtu.be/brK14jr8Kns

映画「仁義の墓場」あらすじ

終戦直後の新宿は、ヤクザと外国勢力との抗争が続く混乱の真只中。テキ屋一家「河田組」の石川力夫は兄弟分の今井、杉浦と中野を拠点とする三国人の愚連隊「山東会」を襲撃しテラ銭を強奪、さらに抗争によって双方摘発される。しかし治安維持に苦慮する警察の計らいで自分らのみ釈放され、まんまと同会を壊滅に追い込んだ彼らは中野今井組を興す。そして石川はこの抗争の最中に知り合った、置屋の若い女、地恵子を強姦して情婦にする。

石川の凶暴性を持て余した組長の河田は、「池袋親和会」の青木を消せと示唆。石川は青木の情婦を犯し、青木を叩きのめす。大幹部梶木を筆頭に復讐のため集結する親和会勢力に一大抗争の危機を迎えるが、河田に縋りつかれた大親分関東野津組組長野津の発案で、進駐軍に鎮圧するよう仕向けることで事なきを得る。

杉浦は野津の盃を受け、組織に同化していく。破壊衝動の収まらない石川は賭場で悶着を起こし、野津から一喝される。逆恨みから野津の車に放火した石川は河田から激しい制裁を受けるが、逆上して親分である河田を刺してしまう。今井にかくまわれる石川だが、その身を案じた妻・地恵子が警察に通報したことから逮捕。

収監された石川を、親に斬りつけた不義理者として周囲の懲役囚たちがつけ狙うが、一年六ヶ月の懲役を受け、出所する。石川は河田組から十年間の関東所払いを食らい、地恵子に体を売らせて獲た金を持って大阪へ移る。この地で肺を病んだ石川は、釜ヶ崎のドヤ街で娼婦からヘロインを覚え中毒となり、売人を襲撃しようとしたところでやはり中毒患者の小崎と出会い、意気投合する。

一年後、すっかり身体を蝕まれた石川らは無断で帰京、今井組の賭場で騒動を起こす。再び、石川を庇う今井。だが、今井になじられ、怒りに我を忘れた石川は今井を刀で斬りつけ重傷を負わす。逃走後、再び現れた石川は今度は今井を射殺、制止しようとした彼の妻にも右手に大怪我を負わせる。野方のアパートに潜伏していた石川と小崎を、警官隊、河田組員、今井組員が包囲するが、石川は無差別に発砲を繰り返す。薬が切れ禁断症状となった小崎を見て追い詰められた石川は、弾も尽き、ヤケになって表へ飛び出したところを取り押さえられる。警察病院に収容された後、石川は殺人及び殺人未遂で懲役十年の刑を宣告される。

昭和26年1月29日、保釈金を工面するなど石川を献身的に支え続けた地恵子は、心身を磨耗し尽くして自殺。刑務所内で胸部疾患が悪化した石川が、病気治療のため仮出獄を許される、わずか3日前のことであった。

火葬を終え、地恵子の骨壷をぶら下げ、河田組に現れた石川は、地恵子の遺骨を齧りながら「そろそろ一家を興したい」と信じられぬ言葉で河田に土地と金をねだる。さらに幹部の神野、松岡からも金を獲た石川は、石材店を訪れ墓石を作るよう要請する。そして「墓にはこう彫ってくれ」と言いながら一枚の紙片を渡す。

亡き今井の組を訪れた石川は仏壇を拝ませてくれと頼むが、未亡人はかつて大怪我を負わされた右手を震わせてその願いを固辞。

墓参りに訪れたところを河田組組員に襲撃され負傷した石川だが、生き延び、病院生活を経て府中刑務所に収監。そして昭和29年1月29日、石川は刑務所屋上から身を投じ、29年の生涯を自らの手で終える。その日は奇しくも亡妻・地恵子の三回忌の日であった。

刑務所の独房内には、石川が書いた「大笑い 三十年の 馬鹿騒ぎ」という文字が残され、石川が建てた自分と地恵子、そして今井の墓石には、「仁義」の二文字が刻まれていた…。

日本ヤクザ映画としての異質さ

義理と人情の日本映画の痕跡すらない、組織に翻弄される悲しき末端のヒットマンの影形もない。

日本ヤクザ映画を根本から覆した、まさにカルト映画です。

ストーリーを追えば、追うほど石川力夫の異常さがわかると思います。

石川の暴走は自分でしか止められなかったという結末をどう見るか?

独房内に残された「大笑い 三十年の 馬鹿騒ぎ」という言葉は

29年という短い生涯を終えようとした瞬間に今までの行いを悔いたのでしょうか?

あるいは、気がついたら一人になっていた自分を皮肉ったのかもしれません。

謎を残して終わる…

カルト映画のもうひとつの特徴でもあります。

この作品、現在では日本でも海外でも評価が高い。

その証拠に、この「仁義なき墓場」2002年に三池祟史監督、岸谷五郎主演でリメイクされていますから。

(ナイトメア・シンジ)

関連記事

  • 関連記事
  • おすすめ記事
  • 特集記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

TOP